「ねえ、行こうよ。お願い!」 リビングのソファに並んで座り、テレビアニメを観ている最中、芽生がしつこくねだった。 「遊園地。お兄ちゃんたちと三人で行きたいの」 「なんで?」悠人が訊き返した。「パパやママとは行きたくないの?」 「そうじゃなくて……」 芽生が理由を語り始めた。 「あのね、友達にマリコっていう子がいて、この前お兄ちゃんと二人きりで遊園地に行ってきたんだって。すっごく楽しかったって写真を見せてもらったんだけど、それがなんだか……本当に楽しそうだったから。私にはお兄ちゃんが二人もいるんだから、三人で行ったらもっと楽しいんじゃないかなって、思ったの」 「ふーん……。そういうことか」 悠人は表情を和らげ、鷹揚に頷いた。 「いいんじゃない?」 やっぱり、と芽生は内心で快哉を叫んだ。悠人はいつだって自分の望みをよく聞いてくれる。だが、問題は次男の方だった。 「僕は嫌だね」 蒼大が冷ややかに言い放った。 「そのマリコって子は兄貴が一人しかいないから、お前は二人連れてって鼻を明かしてやりたいだけだろ?」 芽生は一瞬、言葉に詰まった。どうしてここまで正確に本音を見抜かれるのか、驚きを通り越して腹が立つほどだった。 「そんなんじゃないもん!」 自ずと声が荒くなる。 「お兄ちゃんたちと三人で行ってみたい、理由はそれだけ。パパやママとはこの前行ったでしょ? だから、今度は三人だけで行きたいの!」 「金はどうするんだよ」 蒼大が追い打ちをかける。 「遊園地に行くのにいくらかかると思ってるんだ?一回行けばお小遣いの半分は飛ぶんだぞ。パパ、ママと行けば全部出してもらえるのに」 「お金は……」芽生は躊躇いながらも答えた。「この前おじいちゃんたちにお小遣いいっぱいもらったから、それで……」 「僕はそのお金でゲームを買うんだ。お前と遊んでやるために使うもんか。……それとも、お前が僕たちの分まで全部払ってくれるのか? それなら行ってもいいけど」 「……っ」 芽生は唇を噛みしめた。蒼大を置いて悠人と二人で行こうかとも思ったが、それでは意味がないのだ。それではマリコをギャフンと言わせることもできないし、何より、三人で行けば絶対に楽しいはずだという確信があった。 沈黙が長引く前に、悠人が助け舟を出した。 「行こうよ、蒼大。お前の分は僕が払ってやるから」 「またまた……」蒼大は呆れたように言った。「兄ちゃん、芽生に甘すぎなんだよ」 「僕も行きたいんだよ。面白そうじゃないか、僕ら三人だけで出かけるなんて」 「……」 「な? 行こう?払ってくれるなら行くって言っただろ?」 「……兄ちゃんがそこまで言うなら、まあ、仕方ないかな。付き合ってやるよ」 ようやく蒼大の同意を取り付けると、芽生はソファの上で飛び跳ねながら喜びを爆発させた。