ヘリコプターのフレームからは「完成したバターは冷蔵庫で冷やした方がいい」との指摘があったが、時間がなく、作り立ての温かいバターでも塗装は可能だということで、早速作業に取りかかる。 「みんな、ありがとう」 私は感動のあまり声を漏らす。 アームたちが楽しそうに作業を進めてくれるおかげで、私と迅璃はほとんど何もせず、ほぼすべての工程を彼らが担ってくれている。 ありがたい限りだ。 塗装作業は、ブラシのような手に切り替えたアームたちが、極めて原始的な方法で直接塗るというものだった。まるでペンキ塗りのような単純な手法だが、アームたちの熟練した動きのおかげで、最新技術のスプレー塗装と見分けがつかないほど見事な仕上がりになった。 「次は?」 迅璃が促すと、ヘリコプターのフレームが答える。 「エンジンだ」 エンジンは、ファクトリーの正常な生産ラインで作られた、焼きたてのように熱々のものが棚にずらりと並んでいた。早速その一つを取り出し、フレームに組み込む。 「次は?」 私が尋ねると、エンジンを搭載したフレームが答える。 「トランスミッションだ」 「それって何?」 私が首をかしげると、フレームが説明する。 「ローターをつけるための、帽子みたいなものさ」 新品のトランスミッションも、ゆでたてのようにふわっとしたものが豊富に揃っていた。 私たちはその一つを取り出し、フレームの頭部に丁寧に取り付けた。 「次は?」 迅璃が尋ねると、ヘリコプターのフレームが答える。 「ローターのブレードだ」 「つまり、ヘリコプターの翼のこと?」 私が確認すると、フレームが力強く続ける。 「その通り。私の翼であり、武器でもある。だって、ブレードは刀なんだから」 すると、刀職人が精魂込めて仕上げたような高品質のブレードが7枚運ばれてきて、トランスミッションの上にしっかりと装着された。 「次は?」 私が尋ねると、目の前にはすでに立派なアイボリー色のヘリコプターが形を成していた。もはやただのフレームではなく、攻撃ヘリ「アパッチ」の堂々たる姿だ。 自分の子ではないのに、なぜか胸に込み上げる感動を覚える。 「次は内装だ」 アパッチが答える。 「まあ、自動飛行できればいいから、特に必要ないかもしれない。内装のデザインにこだわる時代でもないし、スキップしてもいいと思う。君、時間がないんだろ?」 「私のことを気遣ってくれるの?」 私はさらに感動して尋ねる。 「そりゃ、乗るのは君なんだから」とアパッチが返す。 「ありがとう。助かるよ。じゃ、すぐ乗れる?」 「いや、まだだ。座席がないから座れないし、燃料タンクもないから飛べない」 「じゃ、座席と燃料タンクを取り付ければいいんだね?」 迅璃が軽やかに言うと、アパッチは少し苦しげな声で答えた。 「そう簡単にはいかない。座席と燃料タンクの取り付けが、一番痛いんだ」 「痛いのか……」私は思案顔になる。「手術みたいに麻酔とか使えないの?」 「無理だ。苦痛を感じること自体が、生産プロセスの一部なんだ」 「そうか……」私は深く頷く。「苦痛なくして本当の誕生はない、ってことだね」 「まあ、ざっくり言えばそんなところ」とアパッチが認める。 「じゃ、どうする?」私が提案する。「心の準備ができるまで待つ?」 「いや、この生産プロセスに心の準備なんて工程はない」 とアパッチは冷静に、しかし声がわずかに震えながら言う。 「大量生産はスピードが命だ」 「じゃ、こうやってグズグズしてる場合じゃないってこと?」 私が核心を突くと、アパッチは苦笑いを浮かべ、トランスミッションを軽く動かして頷いた。 「その通り」 アパッチはブレードを大きく広げ、覚悟を決めたかのように堂々とした姿勢を見せ、ファクトリー中に響き渡る力強い声で最後の指示を出した。 「座席と燃料タンクを持ってきてくれ!」 待ってましたとばかりに、腕組みして見守っていたアームたちが、足元のホイールを使って素早く動き出し、座席と燃料タンクを運んできた。 座席は超高級カーボン素材、燃料タンクは全太陽系にその名を轟かせる強度のアルミニウムスチール製だ。 「やばい……」アパッチの声がさらに震える。「いい素材ほど、取り付けるときに痛みが強いんだ」 「じゃ、ダウングレードする?」 私が尋ねると、アパッチは首を振る。 「いや、大丈夫。つけてくれ」 こうして、座席と燃料タンクの取り付け手術が始まった。 しかし、作業が始まって0.001秒も経たないうちに、私と迅璃は思わず視線を逸らしてしまった。溶接のような作業音が、まるで歯医者のドリルのような不気味な響きを立て、アパッチが耐え難い悲鳴を上げたからだ。その音は、聴覚センサーを塞いでも消えないほど強烈で、視線を逸らすことしかできなかった。 アパッチの苦痛は増す一方で、ついには日本語すら忘れたかのように、ただ叫ぶような声が響く。 「PRODUCTIONHELL!」 その叫びは、まさに地獄を思わせるものだった。 全世界のヘリコプターがこんな苦痛を味わいながら生まれるのかと思うと、彼らの存在自体が途方もなく尊く感じられる。 私たちヒューマノイドロボットは、人間を模倣して作られているため、基本的には苦痛を避けるよう設計されている。嘘をついたり、好奇心を失ったりすることが最大の苦痛――いや、懲罰とも言える感覚はあるが、こんな原始的で直接的な物理的苦痛を目の当たりにするのは初めてだった。 私はまるで自分の神経回路が生まれ変わったかのような、あるいは世界の本質を初めて正しく理解したような感覚に囚われた。 やがて、アパッチの手術が終わった。 私と迅璃は恐る恐る視線を戻し、アパッチを見た。 彼はもう悲鳴を上げることなく、静かにそこに佇んでいた。 いや、佇むというより、誕生していた。 完成していた。 「生産完了」 その声は、もはや赤ちゃんのものではなく、自立した子供のような中性的で落ち着いた響きに変わっていた。 「じゃ、早く乗って」 その頼もしい声に促され、私と迅璃はアパッチに歩み寄った。 「うん!」